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うつの病因について

コラム

2020年10月26日

操作的診断基準と従来型診断基準

現在の精神医学では、診断に対して「操作的診断基準」という枠組みを使用しています。操作的診断基準とは、ある症状が一定期間のうちに存在するかどうかで診断名が決められるというものです。そのため、その疾患の原因に対して言及されることは(ある例外を除いて)ありません。その結果としてうつの概念が広がりすぎてしまったという問題があるということは、こちらのコラムで説明しました。こうした操作的診断基準を補う意味でも、いわゆる「従来型診断基準」としての「内因性」「外因性」「心因性」 の見方は依然として有用であると考えられます。

それでは、この「外因性」「心因性」「内因性」のうつとはどのようなものなのでしょうか。すこしだけ詳しく、取り上げてみたいと思います。

「外因性(身体因性)」のうつ

外因性の精神疾患とは、身体や脳の疾患によって引き起こされ、その原因が特定できているものを指します。身体因性ともよばれ、さまざまな検査によって、脳の萎縮やホルモンの数値など、その原因が確かめることができるものです。

外因性のうつの代表例としては、アルツハイマー型認知症や甲状腺機能低下症などが挙げられます。また、副腎皮質ステロイドなどの薬剤がうつ状態の原因となっている場合もこの外因性に含めます。

外因性のうつは、こうした原因を取り除くことができれば回復していくと考えられます。甲状腺機能低下症などは見過ごされやすいため、治療の初期にしっかりと確かめることが大切です。

「心因性」のうつ

心因性の精神疾患とは、悩みやストレス状況など心理的葛藤から様々な症状が生じるものを指します。神経症/ノイローゼと同義であり、こちらの呼び方が一般的でしたが、現在はあまり用いられなくなっています。

心因性のうつは「抑うつ神経症」とも呼ばれ、失恋や挫折など、はっきりとした心理的要因によって発症したものを指します。この「はっきりとした」というポイントが重要です。本人の視点に立てば、誰でも強い気持ちの落ち込みが生じるであろう、という出来事が引き起こすものが、心因性のうつであるといえます。

心因性のうつも、もともとの原因が取り除かれることによって回復すると考えられています。しかし、性格的なものの影響も強い場合があり、その場合は回復に一定以上の時間がかかると考えられます。

「内因性」のうつ

内因性の精神疾患とは、明確な原因がわからないにもかかわらず、気質や遺伝によって引き起こされるものを指します。従来、精神疾患の中心はこうした内因性のものであると考えられてきました。

内因性のうつの特徴は、あたかも自然に生じたものであるかのように見えることです。きっかけらしきものは語られますが、それは今の苦悩を引き起こすにしては、あきらかに不釣り合いに思えます。また、引っ越しや昇進など、一見すると本人にとってよいと思えることがきっかけとなることもあります。

内因性のうつ病はメランコリー型うつ病とも呼ばれ、些細なきっかけによって、主に中高年以降に発症するといわれます。朝方に調子が悪く午後にかけて回復していくこと、早朝覚醒を主とする不眠、おっくう感が強くそのことでいらいらする、食欲不振、強い罪悪感などが特徴とされます。

内因性のうつに対しては、抗うつ薬がその効果を最も発揮するものとなります。抗うつ薬の服薬と、十分な休養を組み合わせることがもっとも標準的な治療とされています。

外因/心因/内因のうつの区別

しかし、こうした従来型の診断があまり用いられなくなったことからわかるように、こうした外因性、心因性、内因性を明確に分けることは難しくなっています。

外因性のうつに関しては、精神疾患では脳画像診断や血液検査によって明らかな証拠が見つかることによって、鑑別が可能になります。しかしながら、そうした疾患が見過ごされて内因性や心因性のうつと判断されてしまうこともあります。また、心因性のうつと内因性のうつの区別も困難な場合があります。内因性のうつのきっかけと、心因の原因となる出来事は、しばしばく区別がつきません。一見は些細なきっかけに見えたとしても、過去の傷つきの体験が背景にある場合などは、心因の反応にも関わらず、内因性のうつとして治療が開始されることもあります。

ただし、そうはいっても外因性、心因性、内因性は治療の中でかなりはっきりと異なった経過をたどります。経験のある治療者であれば、治療の中でおのずとそれらの特定ができていくと考えられます。

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