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中期:「見守る」支援

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2021年12月21日

どうにか学校を卒業したとしても、社会に出たり、親密な対人関係を築いていく中で、いよいよ「嵐」を切り抜けるために用いてきた方法がうまく行かなくなってきます。就職や結婚といったイベントをきっかけに、「その後の不自由」が本格的にあらわれてくるのです。

彼ら・彼女らもなんとかしようと、自ら援助者の前に登場するようになります。しかし、「つながる」ことの困難さを抱えたままで援助を求めるという、矛盾した対人関係がそこでは生じてくるのです。納得して次の段階に進むためにも、この時期はいろいろなことを試すことを「見守る」という支援が必要となってくるのです。

結果を求めようという焦り

以前より、18歳を超えることで、途端に使える社会的資源や助けてくれる人が少なくなってしまうという構造が福祉の分野では指摘されています。法的には成人として扱われるために、その「自立」ということが求められるようになっていくのです。もちろんまだまだ若いので、社会的に自立するためには多くの助けが必要となります。しかしながら「つながる」ことに困難を抱える人は、適切に自分の限界を認め、他人に頼るということができないのです。

そんな中で「嵐のあとを生きる人たち」はとにかく結果を求めるようになります。大嶋栄子は彼ら・彼女らについて、「何か目標というかゴールのようなものがないと生きづらい」と書いています。これは、彼ら・彼女らの発達課題が最初の基本的信頼感の段階に依然として留まってしまっているからであると考えられます。理由なしに「生きていていいのだ」という感覚を持つことができないために、なんとか生きるための理由を外部に求めようとするのです。

彼ら・彼女らは結果を出すことで過去を「なかったこと」にしようとします。で も、それは自分を否定しながら生きることであり、やがて表面に見せている自分 と等身大の自分との間の差が大きくなってしまいます。思うような結果を得ら れているうちはいいのですが、上手くいかなくなった時に破綻が表われ、抑うつ や引きこもり、怒りなどが出現してきます。

結果主義の落とし穴

こうした特徴は「結果主義」として、市橋秀夫が指摘する自己愛性パーソナリティ障害の特徴と重な るものです。しかし市橋が述べるように、こうした結果主義に由来するような精神病理は現代の一般的な青年期の心性として見られます。しかし「嵐のあとを生きる人たち」の場合、強い抑うつや気分変動、あるいは激しい行動化や摂食障害、解離や原因不明の心身症状などを伴って現れてきやすいと言えます。

結果を得ようと焦る気持ちが強いがために、彼ら・彼女らの生き方は刹那的と なります。うまくいかない理由をすべて症状のせいにすることや、あるいは怒りを治療者に向けることもあります。インスタントな救済を求めて、どんどんと使用する処方薬が増えてしまっていくこともあります。あるいは近寄ってくる他者に対して非現実的な救済を求めるがあまり、しがみつきと見捨てられ不安の中で動揺することを繰り返すことが見られることがあります。

「見守る」という支援

こうした姿勢が支援者によって「内省する能力がない」と批判的に捉えられてしまうことがあります。あるいは、偽りの適応を保つような自我機能だけに注目してしまい、その背景にある傷ついた自己への視座が抜けてしまう場合も珍しくありません。このどちらも、この時期の支援としては不十分であると思われます。しかしそれを「その後の不自由」として取り扱うことで、治療的コミュニケーションが開かれるのです。

回復の過程に入るためには、まずは自分で納得できるまで、いろいろと試してみることが必要です。そのため彼ら・彼女らがこの時期にいる間は、支援者は焦る気持ちに共感しつつ、その試行錯誤の過程を見守っていくことが求められます。たとえ思うような結果がでなくても、そこまでのプロセスを大事にすることを伝えていきます。そうした中で、等身大の彼ら・彼女らの自己像が育まれていくのです。

この時期のクライアントには、ニーズに合わせる形で、支援者からもさまざまな治療法の提案していくことは可能になります。しかし彼ら・彼女らに対しては、 技法は試しにやってみようというぐらいのテンションでよいと思います。ダメでもともと、生き残るための手段が一つでも増えたらもうけもの、というくらいの気持ちがちょうどいいかもしれません。たとえ思うような結果が出なくても、大丈夫なのだということを経験してもらうことも、回復のための重要なステップになると考えられます。

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