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パニック症

心理教育

2020年10月30日

パニック症とは

パニック症(パニック障害)とは、動悸やふるえ、息苦しさが数分のうちにどんどん高まり、時に「死んでしまうのでは」とまで感じるような「パニック発作」が、繰り返し生じることによって生じる病気です。パニック発作が繰り返されることによって、パニックになりそうな場面を避けたり(広場恐怖)、「またパニックになるのでは」という不安で頭がいっぱいになってしまう(予期不安)ことも特徴です。強迫性障害や全般性不安障害、社交不安症などと並んで、不安が強く影響して生じるとされています。

パニック症は障害有病率が1.5~2.5%と言われており、身近な精神疾患の一つです。しかし、この「パニック症」という病気については意外と知られていません。おおまかな特徴について、ここでは取り上げてみます。

そもそも「パニック」とは?

災害や事故が突然起きたとき、生き物はその命を守ろうと身体を急速に変化させます。すぐに動けるように鼓動を早くし、代謝を落とし、助けを呼ぶために大声をあげるような準備をします。これは「戦うか逃げるか」反応と呼ばれるもので、生命を守るために体に備わったシステムの一つです。いわゆる「パニック」の状態で起きることは、生存のために必要なことなのです。

しかしながら、こうした生存のために必要な緊急プログラムが、何でもないときに生じてしまうことがあります。その必要もないのに生じてしまう、生命を守るためのプログラムの誤作動が「パニック発作」と呼ばれるものの正体です。以下でそのプロセスについてみてみましょう。

1)初回発作

最初の発作のきっかけは、ささいなことです。まず、寝不足、疲れ、低血糖やかぜといった身体的不調や、あるいはたばこやコーヒーなどの物質の接収などによって、生理的変化が引き起こされます。このちょっとした変化を、脳が「命の危機が迫っている!」と勘違いして生じて、最初の発作が生じることとなります。

身体の外ではそうした危機を感じるべき事柄は起きていないのですが、身体の内はまさに生きるか死ぬかの「パニック」の状態に陥ってしまいます。身体は命を守るための行動を起こそうと、心拍数を上げ、発汗し、酸素を取り入れるために盛んに呼吸をします。

身体がそうした状態になってしまっているので、急速に不安が高まり「死んでしまう!」「どうにかなってしまう!」と、頭も同時に「パニック」に陥ります。多くの人が慌てて病院に駆け込んだり、救急車を呼ぶことも無理もありません。なぜなら身体は今まさに、命の危機を感じているのですから。

しかしこの急激な不安の高まりは、通常は数分~数十分程度で自然に収まります。救急車を呼んだはいいが、病院につくころにはすっかり落ち着いていた、ということがほとんどです。一応は検査をするものの、身体の異状はなくそのまま帰宅となり、本人も周囲もなにがなんだかわからない・・・初回発作は、多くの場合でこうした形をとります。

2)予期不安→再発

初回発作の恐怖は非常に強く、脳に刻み込まれます。生きるか死ぬかの体験をしたのですから、それも当然といえます。そうなると、「また発作はおきないだろうか」と心配で心配でたまらない・・・そんな状態になってしまいます。こうした再発への不安を「予期不安」と呼びます。予期不安があると、「また発作が起きるに違いない」「発作が起きたら大変になってしまう」とか、あるいは「自分は発作に対してなにもできない」という考えが余計に強まってしまうことになります。

なにより予期不安が強いと、以前なら無視できていたような、ちょっとした身体感覚に対しても、非常に敏感に反応するようになってしまいます。そうすると、実際に自律神経系に乱れが生じやすくなり、そしてその変化をとらえて、またパニック発作が再発してしまうのです。

3)広場恐怖

先に述べたように、パニック発作は生命維持のシステムが「誤作動」することによって生じます。あくまで誤作動のため、身体の外に実際の脅威は見つかりません。しかし人間は、こうした「原因がない」という状態をがまんすることができません。そのため、いわば「仮想敵」として、発作が起きた状況を原因に求めるようになるのです。

そうなると、発作が起きた状況を何が何でも回避するようになります。しかし回避をしても、「回避したので無事にすんだ」と思うことはあっても「回避しなくても大丈夫だった」と思うことはありません。そのため、その場の不安は減っても、次なる不安は減ることがありません。発作が起きた状況を回避することは、結果的には不安を維持することとなってしまいます。

パニック発作が繰り返されると、どんどんとその状況を避けるようになってしまい、行動範囲が狭まってしまいます。この状態を「広場恐怖」と呼び、社会生活を送ることが困難となってしまうことも度々あります。

パニック症の治療

パニック症の治療は、まずは上で説明したようなパニック症のシステムを理解することから始まります。発作が起きると「死んでしまう!」と感じるほどの不安が生じますが、実際に死ぬことはないのです。そのことをまずは知ることが大切です。

パニック症の治療の主となるのは、薬物療法と、認知行動療法と呼ばれる心理療法です。いずれも症状を取り除くというよりも、症状を維持しているシステムを切り崩すことが主眼に置かれます。 くわしくはこちらのコラムをご覧ください。併存する疾患がない場合、こうした治療により比較的スムーズにパニック症は改善します。

他にも、発作が何度も生じていると、自分が何も対処できていないかのように感じるようになってしまいます。そこで呼吸法やリラクセーション法を練習することによって、対処の方法を身につけることも有効です。自分で思っている以上に、パニックが起きた時でも動けていたということもよくあります。事実をしっかりと確認し、できている対処を発見していくことも大切です。

パニック症がなかなか治らない場合は、その背景に複雑な要因があったり、症状を安心して手放すことができない事情があることが多いです。丁寧にそうした背景を確認していき、根本の原因に取り組んでいく治療が必要となります。

より詳しい情報を知りたい方は、厚生労働省のHPを参考にするとよいでしょう。

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