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マインドフルネス瞑想:②生活の中で行うもの

コーピング

2020年11月6日

先に取り上げたマインドフルネス瞑想は、今までやったことない取り組みであると考えられます。しかし、「いま、この瞬間に意図的に注意を向ける」というマインドフルネスの実践は、これまでの普段の生活の中でやっていることを元に行うことができます。

ほんのちょっと、視点を変えて注意を向けることで「いま、ここ」とのつながりを持つことができるのです。一週間に一つずつ、全部で10週間チャレンジしてみましょう。どうしても難しければとばしても、以前と同じことをしても構いません。だんだんと一日のうちに「いま・ここ」に心をおいて、それを味わう瞬間がだんだんと増えていくはずです。

まずは五感を使って、自分の外に注意を向ける実践から行いましょう。これらの方法は、不安やいらだちを感じた時に自分を落ち着かせる方法としても用いることができます。これは「グラウンディング」と呼ばれる方法であり、自分に合った方法が見つかると、辛い状況を乗り切る手助けとなるはずです。

ただしこれらのワークも、安全な場所が確保されていない段階で行うことは控える必要があります。

1)足の裏を意識する

一日のあいだに、できるだけ何度も足の裏を意識しましょう。床や地面に足が押し付けられている感覚を捉えます。足に伝わる温かさや冷たさも意識します。しばらく静かに立ってみて、足の裏の感覚を味わってください。あるいは、かかとから足を下して、しっかりと一歩一歩踏みしめて歩き、その感覚を味わうようにしてみてください。

グラウンディング)不安やいらだちを感じているときには、足の裏に注目してどっしり大地に根を下ろしてみましょう。心の落ち着きと平静さを得ることができます。あるいは「心ここにあらず」の状態になっていると気づいたときには、大地を踏みしめて現実のつながる感じを得るようにしてみましょう。軽く足踏みをする、つま先で立ってみる、軽く伸びをしてストレッチをするということも有効です。筋肉の緊張、そして弛緩を味わってみましょう。

2)手を意識する(優しくふれる)

一日のうちに何度か、自分の身の回りにあるものを触れるとき、少しだけ優しさをこめて触ってみましょう。そしてその形をいつくしむように、撫でてみましょう。その形を感じてください。そしてそれを触る自分の手を感じて見てください。

グラウンディング)グーで小さな緊張を、パーで小さな弛緩を生み出していくことを、緊張、不安、心配、イライラといったものがあるときにやってみましょう。不快な状態が変化することを実感できて、イライラが少しおさまります。あるいは、自分の目の前に手のひらを広げて、口をすぼめてふーっと息をそこに吹きかけてみましょう。自分の息が手のひらに当たってひんやりとする感覚を味わってみましょう。

3)「青いもの」に目を向ける

身の周りにある、青い色に注目します。空のように明らかな青だけでなく、微妙な青や、色合いの違うさまざまな青を探してみましょう。青に近い色であればなんでもかまいません。視線を柔らかくして青いものを招き入れるようにすると、良く見つけことができます。

グラウンディング)緊張、不安、心配、イライラが高まったとき、周りにある青色を探しましょう。一つ見つけたら、次の一つへ。身の周りにある青色を数え上げていきましょう。あるいは、周りをキョロキョロ見渡して、目に見えるものなんでも3つ口に出して言ってみましょう。忙しい思考が少しストップしてくれます。

4)「匂い」や「香り」を意識する

できるだけ多く、「匂い」や「香り」を意識してみましょう。一日に何度か、犬のように空気の匂いを嗅いでみましょう。食べたり飲んだりする時が一番簡単ですが、その他の時間にもやってみてください。また、アロマ入りのキャンドルやお香などを焚いても良いかもしれません。匂いと共に、さまざまな感情や欲求、また記憶などが思い起こされることに気づいていきましょう。

グラウンディング)自分の好きな・落ち着く匂いを探し、それを手首やハンカチにつけて持ち歩いてみましょう。緊張、不安、心配、イライラが高まったりしたときに、その匂いを嗅ぐと、落ち着いた気分を取り戻せるはずです。あるいは、思い切り鼻から息を吸って今の場所の匂いを嗅ぐこともよいでしょう。何も匂いがしない時は、手元にあるお菓子やジュースの匂いを使ってみましょう。

5)身の回りの音に耳をすます

一日に何度か、していることをやめて耳をすませましょう。体内から聞こえる音、部屋のの音、建物なかの音、屋外の音・・・はっきりとした音にも、かすかな音にも耳をすませてみましょう。一日疲れ切ったのであれば、夜には外へ出て、意識を闇の中に解放し、さまざまな心の声を無視して、夜のさまざまな音に耳を澄ませてみましょう。

グラウンディング)落ち着かなくなったとき、自分の周囲でなっている音に耳を澄ませてみましょう。できれば屋外で、風の音など自然の音に耳を澄ますとよいでしょう。あるいは、Youtubeなどで落ち着ける音(自然音・ホワイトノイズ・チベタンなどで検索してみましょう)を見つけ、緊張、不安、心配、イライラが高まったりしたときに、それを聞いてみましょう。複数の音が組み合わせものを使い、その中の一つを追いかけて聴く方法もおすすめです。

6)食べるときは「食べること」に専念する

一日に一食は、食べたり飲んだりするときに他のことをしないようにしてみましょう。きちんと座って、自分が口にするものをゆっくりと楽しみます。食べ物の色合い、形、表面などを眺め、口にいれて香りや味を味わいます。食べたり飲んだりするときの音にも注目しましょう。難しければ、おやつなどのクッキー一つからでも試してみましょう。

グラウンディング)緊張、不安、心配、イライラが高まったりしたときに、水を飲んでみましょう。その際はゆっくりと、なるべく冷たい水を飲むとよいでしょう。のどが動く様子、お腹に水が溜まっていく感覚に注意を向けてみましょう。他にも、飴やガム、タブレットなどを使って見ることも試してみてもよいでしょう。

54321法

以上が五感に注目した日常生活でのマインドフルネスの実践と、グラウンディングの方法になります。これらを組み合わせたグラウンディングとして、「54321法」というものがあります。

まずは、今ここで目に見えているものを5つ確認します。次に、体に触れて感じているものを4つ確認します。そして、聞こえている音を3つ確認します。そのあとに、匂いを2つ確認します(好きな匂いを思い浮かべても可)。最後に、自分の好きなところを1つ確認します。他にもバージョンがありますので、セラピストと一緒にいいやり方を見つけていきましょう。

続いては、自分の体に注目した4つのワークになります。

7)身体が感じる「暑さ」と「寒さ」の感覚を意識する 

「暑さ」と「寒さ」の感覚に注意を払います。屋内から屋外から出たとき、あるいはその反対の時に、身体が感じる「暑さ」や「寒さ」について注目してみましょう。もちろん体調を崩してはいけませんが、少しの暑さや寒さを味わって、それがどのように変化するかを観察してみましょう。

また、自分の気分や感情によって、どのように自分の身体が温かくなったり冷たくなったりするのか、その変化を観察してみましょう。例えば怒りの感情を持った時は頭や胸、こぶしのあたりが熱くなるとされます。反対に落ち込んだ時は、両手両足の全体が冷えていくとされます。悲しみを感じるときは目や鼻、胸のあたりが熱くなり、手足は冷たくなります。そして幸せや愛を感じるときは全身がポカポカと温かくなるはずです。

8)「体の重心」を意識する

自分の「体の重心」を意識してみましょう。下腹部の中央、おへそから5㎝ぐらい下で、お腹の壁と背骨の中心にある、武術では「丹田」と呼ばれる部分です。心がさまよい出したとき、意識をこの重心に引き戻すようにします。まずはこの部分を意識してしばらく立ってみたり、しゃがんだりしてみましょう。大地にしっかりと根を下した感じを味わうことができるはずです。そして意識を重心に向けたままで、歩き出してみましょう。大地を踏みしめている感じを味わうことができるはずです。

9)「お腹の好き具合」を意識する

今回も引き続き、お腹のあたりに意識を向けます。「食事の前」と「あと」にこの部分を意識しましょう。「空腹のとき」と「満腹のとき」、お腹はどんな感じを伝えてくれるでしょうか。食事の前、半分ほど食べたとき、食べ終わった後のお腹をチェックしてみましょう。きちんと「腹八分目」の食事ができているでしょうか、お腹が満腹を感じる前に食べ終わってないでしょうか、あるいはきちんと自分の満腹感を感じることができているでしょうか?心身が健康な時は、きちんと身体は空腹と満腹を感じ、そしてリズムよく食事をとることができます。自分の状態を把握することを試してみましょう。

10)「自分の表情」を意識する

普段過ごしている時、自分はどんな表情をしているでしょうか。自分一人で過ごすとき、他人と過ごすとき、表情は動いているでしょうか。実際に鏡をみて、チェックをしてみましょう。ふと気づいたときには、梅干を食べたときのように、口をすぼめて顔の表情筋を動かしてみましょう。そして他人と過ごすときは、微笑むことを意識してみましょう。顔の表情を作っていくことは、腹側迷走神経という社会的なつながりを増す神経を刺激するといわれています。

以上のワークは、日常生活の中で、自分の五感や身体を使って「いま・ここ」とのつながりを取り戻す方法となります。自分の五感や身体にアクセスできるようになると、不安感や緊張が高まったときにも、それを落ち着かせることがだんだんとできるようになってきます。いきなり大きな変化が起こることはあまり期待できませんが、続けていくと確実に効果が出てくる方法となります。焦らずゆっくり取り組んでいきましょう。

参考文献

ジャン・チョーンズ・ベイズ、高橋由紀子訳・石川善樹監修 「今、ここ」に意識を集中する練習:心をつよくやわらかくする「マインドフルネス入門」 日本実業出版社

浅井咲子 「今ここ」神経系エクササイズ:「はるちゃんのおにぎり」を読むと、他人の批判が気にならなくなる。 梨の木舎

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