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発達障害

心理教育

2020年11月23日

発達障害とは

発達障害とは「生まれ持った性格=発達特性」が生きていく上で障害になることをいいます。「発達特性による障害」なので、「発達障害」といいます。発達特性は生まれつきなので、「生まれながらのうっかりさん」や「生まれながらのしっかりさん」などなど、全員にあるものです。

発達障害を説明していくにあたり、今回はうっかりさんを例にあげます。うっかりさんにも程度があります。グラデーションで想像するとわかりやすいと思われます。「色濃いほど発達障害じゃないの?」と思われる方が多いですが、これは誤解です。


診断をつけるにあたって

発達障害と診断されるには、以下の2つの条件を満たすことが必要です。

①生まれながらの特性によるものであること

②2か所以上の環境で困っていること

まず①は言わずもがなですね。発達特性による障害と診断するには、障害のもとが発達特性であることが絶対条件です。大切なのは②です。プライベートでも、前の部署でも問題なかったけど、移動さきの部署だけでうまくいかない」という場合、「それって発達特性によるものというより、環境が悪いんじゃない?」となるからです。

発達特性が色濃くても、適応できる場所があってうまくやれていて、本人も周囲も困り感がなければ、障害とは言えないのです。困りごとを解消するために発達障害うんうんかんぬん説明するよりも「その部署がその人に合っていないだけだから部署異動しちゃいましょう」とすれば、困り感がなくなって障害じゃなくなります。どんなに癖の強い人でも、適応できる場所があればみんなハッピーです。芸能人や芸術家はその顕著な例でしょう。お笑い芸人の中川家礼二さんもTVでよく言われていますね。「オカンに、あんた芸能人になるしかないで、とよく言われていた」と。中川家礼二さんは自分らしく過ごせる環境で見事に社会的地位を確立されて、適応されています。でもあの人が会社の上司だったら嫌だし、本人もきっと苦しい毎日を送っていたかもしれません(礼二さんが発達障害である、ということでは決してありませんので悪しからず)。発達特性が色濃い人は、適応できる場所にフィットすることが大切なのです。フィットしていれば、障害ではなくなります。たとえ診断基準を満たしていても、本人や同胞が困っていなかければ発達障害とはならないのです。

逆に、特性自体は色薄いけど、困っている人もいます。そういう人たちは「発達障害」となります。この人たちも環境を変えると障害じゃなくなることもありますが、色薄い分周囲から配慮してもらったり、諦めてもらったりすることが難しい分、大変な思いはしやすいかもしれません。このような例を「発達障害のグレーゾーン」と言います。グレーな分できないこともあるけども、がんばればできちゃう人たちです。この「発達障害のグレーゾーン」そして結びつけて論じられやすい「大人の発達障害」については、こちらのコラムをご覧ください。

それでは、それぞれの発達障害についての概略を見ていきましょう。

自閉症スペクトラム

まずは、自閉症スペクトラム(ASD)です。これは①コミュニケーション/想像力の障害、②興味/関心の幅の限定的な狭さ、③感覚過敏/感覚鈍麻が特徴としてあげられる発達障害の一群です。かつては「アスペルガー障害」や「広範性発達障害(PDD)」呼ばれた群も、今はこの自閉症スペクトラムに含まれています。

まずは、①コミュニケーション/想像力の障害です。ここに障害があると、物事を言葉通りに受け取ってしまい、忖度ができない場合があります。例えば、「お風呂を見てきて」と言われて見に行き、お風呂があふれていても「見てきたよ〜」と親に報告する子どもなどは、「お風呂を見てきて」に含まれていた他の意味を想像するところの難しさがあると言えます。

次に、②興味/関心の幅の狭さです。特定のものにハマり、それ以外は顕著に苦手さを感じます。電車の種類やウルトラマンシリーズの細かいところまで記憶してランランと語れる子が、人の話には全く興味を持たないなどが例です。モノには興味が沸くけど人にはわかない子どももいます。そういった子どもは、人の顔を見分けられない「失認」という症状が見られることもあります。発達特性の薄い人が「よくそんなに電車の違いを見分けられるね」と思うのと同じ感覚で「そんなに人を見分けられるのすごいね」と特性が強い人は感じます。

この①と②の症状は、自閉症スペクトラムの人が幼少期から「人からの刺激を好む」傾向が弱いために生じると考えられます。詳しく知りたい場合は、少し長いですがこちらのコラムを参考にしてください。

そして、③感覚過敏/鈍麻です。感覚過敏だと環境変化に敏感です。いつもと同じ行動が安心する、ちょっとした予定変更はとっても苦手、などといったことに繋がりやすいです。他の人にとって気にならない音をとってもうるさく感じたり、特定の感覚が極端に苦手だったりします。反対に感覚鈍麻は、自分の状態を観察することの苦手さに繋がり「よくわからないけどイライラする」となり、癇癪が生じやすくなることが起きます。

このような①〜③の特徴があることから、大人になると自閉症スペクトラムの人は対人コミュニケーションにおいて「正しいけど不適切」という困難さを抱えることになります。詳しくはこちらのコラムを参考にしてください。

ADHD(注意欠陥多動性障害)

注意のコントロールができない、ということが特徴の発達障害の一種です。①不注意、②多動、③衝動性の三つがその症状となります。

まず、①不注意です。忘れものや無くしものが多い、という形で表現されます。ただADHDの人は、子ども時代にランドセルを忘れて小学校に行くなど、通常では起こり得ないミスを起こしたりします。注意が移り変わりやすいので、集中しないといけない場面では集中しやすい環境作りが大切になります。

次に、②多動です。生得的なエネルギーの高さです。子どもであればとにかく元気に動き回り、大人であればいろんなことに手を出します。「落ち着きのなさ」として、貧乏ゆすりや手癖として出ることもあります。そして、③衝動性です。やりたいと思ったことに対して、一直線に向かってしまい、頭がそれでいっぱいになります。

ADHDの症状が強い場合、投薬治療が行われます。しかしその場合でも、まずは本人の生活のしやすい環境を整えることが必要です。また、ADHDはこうした症状だけでなく、それがあることで副次的に生じる症状(二次障害)も大きな問題です。こうした二次障害を予防するためにも、ADHDの子どもにはとにかく褒めまくるという対応が必要です。また、大人には自分の特徴を理解して工夫をしていけるように援助することが必要です(参考 ADHDの背景と特徴)。他にも、ADHDの人は不安が高い状態では注意の固着が生じ、表面的にはASDのような症状がでてしまうことがあります(参考 ADHDとASD)。さらにはいわゆる「第四の発達障害」として、児童虐待の後遺症としてADHD様の症状が出現することが知られています。

LD(学習障害)

他の知的な能力には問題ないにもかかわらず、読み・書き・計算など、学習に必要な能力に障害が出てしまう障害のことを言います。有名なのは俳優のトムクルーズです。いろんなことができるけど、文字が踊り出してしまうので台本を覚えるときは、音読してもらう人を雇っているとのことです。

知的障害

上の三つは、得意と不得意の間に差があるタイプの発達障害です。知的障害は全体的な知能が低いため、できないことが多いタイプです。目安としては下位2%ほどですが、「知的ボーダーライン」としてもう少し多くの人たちを含める考え方もあります。

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