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ADHDの背景と特徴

コラム

2020年12月8日

ADHDとは

ADHDとは「注意欠陥・多動性障害」であり、その名の通り不注意や多動といったものがその主な症状になります。「落ち着きがない」「忘れものが多い」「おしゃべり」など、言葉にすると誰にでもあるようなことになるのですが、授業中に立ち歩いてしまう、ランドセルごと置いてくるなど普通はしない忘れものをする、他人が話している最中にそれを遮って話し始める・・・など、ADHDの人は明らかに普通とは異なる仕方でそれが現れてくることが、その特徴となります。

こうした特徴に対して、ADHDの人は周囲から「気をつけるように」と注意をされ続けられながら生活を送っています。しかし、ADHDの人は十分に気をつけながら生活を送っているのです。それにもかかわらず、こうした不注意や多動が治らない・・・つまり、わかっていてもできないという体験を積み重ねているのです。このわかっていてもできないことは「実行機能の障害」と呼ばれ、ADHDのさまざま症状の背景にある本質的な特徴であると考えられています。

しかしこの「わかっていてもできない」という特性は、それ自体で障害となるだけではなく、同時にADHDの人の生きづらさというものに直結するものとなっているのです。ここでは、そのことについて述べたいと思います。

「わかっていてもできない」こと

私たちが何かしらの行為や作業を「できる」ようになる時、それをまず「わかる」必要があります。この「わかる」というプロセスを抜きにして「できる」ようになることはほとんどないため、一般的に「わかる」ことと「できる」ことは同一視されています。わかっているから、できるようになる。できないということは、本当はわかっていないということ。これが多くの人にとって自然な考えなのです。

しかし、すでに述べたようにADHDの人は「わかっていてもできない」という特性があります。そのため、下記の赤線のルートが存在するのです。

もちろん、どんな人でも気分がよくなかったり、やる気が出ない時は「わかっていてもできない」時があります。しかしADHDの人は、自らの意思ではどうしようもなくこの「わかっていてもできない」というルートに引きずりこまれてしまうのです。

ADHDの人が「できない」時に起こること

それでは、「わかっていてもできない」という特徴を持つADHDの人が「できない」時、どのようなことが起こるでしょうか。一般的には「できないということは、本当はわかっていないということ」であると思われていますから、何かが「できない」時に問題とされるのは、ほとんどの場合は「わからない」ことです。学校や家庭でされるお説教がその典型ですね。「どうしてできなかったのか?」ことではなく、「どうしてわからなかったのか?」と責められるのです。

ですがADHDの人は、わかっているのです。さらに素直なので「どうしてわからなかったのか?」と問われると、素直に「いえ、わかっていました」と答えてしまいます。しかし一般の人は「できない=わかっていない」と捉えているのでそう答えると「嘘つけ、わかっていないだろう!」と言われてしまいます。あるいは、なぜできなかったのかという理由をつらつらと説明するということもあります。しかしそうすると「言い訳をするな!」とさらに怒られることになります。

こうした経験を繰り返すうちに、失敗すると衝動的に誤魔化すようになってしまうことすらあります。ただそれが露見してさらに怒られてしまう・・・こうした負のスパイラルにハマってしまいます。その結果、学校や職場といった場所で人間関係がうまくいかなってしまうのです。

また、ADHDの人自身も「わかっていたらできるはずだ」と思っている場合もほとんどです。そのため、「自分はわかっているつもりなのに、本当はわかっていない頭の悪い人間だ」「意思の弱いダメな人間だ」など、低い自己評価をしてしまうことが多いです。このように「わかっているけどできない」という特性は、周囲や自分が「できないのはわからないからだ」と思い込んでいるがために、人間関係のうまくいかなさや、自己評価の低下に繋がってしまうことになるのです。

「わかっていてもできない」ことへの対処法

・工夫!

それでは、この「わかっていてもできない」ことについて、どのようにすればいいのでしょうか。その答えとしては「工夫」となります。「わかっていてもできない」ことを、少しでも「できる」ようにするのが工夫となるのです。

・わかるとできるを区別しよう

工夫をしよう!となるためには、まずは自分自身で「わかる」と「できる」を区別することが必要です。わかっていないからできないのだ、と思ったままでは「気をつけよう」「注意しよう」となってしまって「工夫をしよう」とはなりません。まずは自分は「わかる」が「できない」のだ、ということをしっかりと理解することが必要です。

ただし、周囲は変わらず「できないのはわからないからだ」と思っています。そのため、注意された時は周囲に「気をつけます」「注意します」と答える必要はあります。しかし、その時でも心の中では「わかっていてもできないんだよ」とつぶやいておきましょう。

・工夫を体感しよう

「わかっているけどできない」ことが自分の特徴だとわかったら、できないことに対して、具体的な工夫を行っていきましょう。カウンセリングなどで専門家からアドバイスを受けることも良いですが、本にはすぐに取り組める工夫が詰まっています。まずはここから、参考にしてみると良いでしょう。ちなみに以下の二冊は、職場でうまくいかない人に最初に勧める本です。

ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に働くための本

発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術

それぞれ専門家、当事者の立場から、職場で「わかっているけどできない」ことに対する工夫について書いてあります。まずはこれらの本の中で、自分が取り組めそうな工夫をはじめてみましょう。

・うまくいった工夫を重ねていこう

工夫をすることで、確実にできることは増えていきます。しかしながら、ADHDの人たちの「わかっていてもできない」という特徴は無くなりません。そのためどうしても、周囲の人がしないようなミスをしてしまって落ち込んだり、怒られてしまうことは出てきてしまいます。

しかしながら、工夫をしていくことで、以前の自分よりも確実にできることは増えていくはずです。自分なりにできるようになったことを確認していくと、少しづつ自信を持てるようになります。焦らずゆっくりと、やっていきましょう。

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