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雑感:ADHD症状の現れ方

発達障害

2020年12月10日

以前にも述べたように、ADHDの特徴は「わかっているけどできない」ことに集約される。ただこの特徴は、ADHD以外にもみられる。双極性障害2型や、自己愛や境界性の人格障害、そして解離性障害などである。実際、こうした人たちの臨床をやる上で、かつてADHDと診断されていたケースや、併存例としか言えないようなケースをよく見るように思う。

これらは「第四の発達障害」として虐待の後遺症としてのADHD様の症状、とまとめられるかもしれないが、そうした逆境体験がない例でもみられる。あるいはADHDベースでもこうした疾患に似た症状が出ることもある。何かしらの症候群としてこれらの障害は将来的にまとめられるかもしれない。共通するのは、ワーキングメモリと注意機能の問題から生じる、ということにあると思う。そうなると前頭葉機能低下症候群(仮)みたいな名前はついても不思議ではない。同時にパーソナリティとしてある程度共通性が見出せるのも、興味深いなと思う。

ただ同時に言えるのは「わかっているけどできない」ことはADHDの診断としての特異度は低いということである。これに基づいてADHD診断し、投薬をするしないを決める、というのはあまりよくないのだろう。反対に共通していうことができるのは、いずれの例でもADHDの人が行う工夫の効果が期待できるということになると思う。症状の根っこにあるなんらかの生物学的特徴に対する処置は違うけども、そこから出てくる症状への処置は共通するということなのかな、と。

そうなるといわゆる「行動処方」として、こうした症候群(仮)に対してADHDの人が行う工夫をするように教えていくことは、悪くないと思う。とりわけ解離群には有効になるのでは、という予感がある。USPTでも解離人格の統合は注意機能やワーキングメモリの向上というメリットがあると説明すると聞いたし。実際の生活機能の向上は本人にとってはすごく重要だから、意識的に治療戦略の中に取り込んでいくのはありかもしれない。反対に、ADHDの人にいわゆる「正常解離」として、軽度の解離症状が認められることもすごくある。パトナムは解離を自我状態の移行の失敗として論じているけど、注意障害からそうした移行に失敗してしまうことはADHDの人のあるあるだし。あとは幼少期に強く叱責を受ける体験とかもADHDではあるあるだから、不思議の国のアリス症候群とかイマジナリー・フレンドとかもそこが由来となっているケースもある。

ただ結局、工夫もコツコツしなくちゃいけないから、行動処方をしたとしても人格障害圏は大変なのかもしれない。人のアドバイスは素直に聞いてくれないから。治療的にADHDかもね〜、と伝えていく戦略もあんまりいい方向にいかなそう。そうなると治療者もそういったパーソナリティへの対処法を身につけていかないといけない。結局治療上は全部アセスメントして、やれるところからやっていくしかないのだよな、という身も蓋もない結論になるけども。

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