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不安への対処:暴露反応妨害法

コラム

2020年11月4日

注目を「原因」から「維持」へ

強迫性障害や不安障害、パニック症は本人にとっても周囲にとっても「?」が多い疾患です。自分でも恐れる必要がないとわかっているのに、恐れてしまう。周囲がいくら説得しても、本人もわかっているけどやめられない。自身も周囲も、やきもきしてしまうことが非常に多い疾患なのです。

こうしたとき、われわれはついつい物事の「原因」を探してしまいます。職場や学校のストレス、友人関係、育て方などなど・・・しかし、こうした疾患はともするとその原因が存在しないということもあるのです。ないものを探そうとするとき、症状はドツボにはまってしまいます。パニック症の項目で述べたように、時として広場恐怖とよばれる状態になってしまうこともあります。

ではなにを注目すればよいのか。それはなせ症状が生まれたかという「原因」ではなく、なぜその症状が「維持」されているかという点です。振り返って考えてみれば、われわれは一回限りの出来事で「困る」ことはありません。それが何回も繰り返されるからこそ「困る」のです。困り感を解決するために必要なのは、それを維持させないようにすることなのです。

なぜ症状が維持されるのか

ではここで、なぜ強迫性障害や不安障害、パニック症の症状が維持されているのかを振り返ってみましょう。

こうした症状があると、ある場面においてとても強い不安(恐怖)が生じることとなります。これは耐え難いものであるため、この不安から逃げるためになんらかの方法をとることになります。手を洗ったり、外に出るのをやめたり、ということです。こうした行為は、不安を避けるために行われるために「回避行動」と呼ばれています。

回避行動によって、一時的に不安は減少します。しかし、そうした回避行動をやめると再び不安になってしまいます。そしてまた症状が出てしまい、回避行動をすることが必要になります。さらにやっかいなのは、多くの場合、回避行動によって不安が完全に下がりきることがないということです。そのため、より強い回避行動や、また別の回避行動が必要となってくるのです。 すなわち、回避行動によって症状が維持されてしまうのです。

「そのままにしておく」

では回避行動をとらず、症状を減らしていくためには、どのように不安を減少させればよいのでしょうか。 その答えは「そのままにしておく」ということです。不安はそのままにしておくと、時間が経つことで必ず減少します。回避行動をしないことで一時的に不安は高まることもありますが、それでもその状態が持続されれば、必ず不安は下がるのです。

このように自然に不安が減少した場合、回避行動をとった場合と異なり、しっかりと不安が下がり切り、再発しにくくなります。結果として悪循環は断ち切られ、症状を緩和させることになります。

暴露反応妨害法とは

このシステムを利用した治療が、暴露反応妨害法と呼ばれるものとなります。 暴露反応妨害法とは、認知行動療法という心理療法で行われる技法です。暴露反応妨害法は、暴露と反応妨害という二つの手続きからなっています。

暴露とは、不安を喚起させる状況に身を置く、ということです。あえて症状がでるような場面を設定します。苦手な場面に身をさらすことになりますから、本人にとってはとても大変なことです。しかし中途半端ではいけません。暴露がうまくためには、しっかりと不安を上げる場面を設定することが重要です。そして反応妨害とは、回避行動をとらせないようにする、ということです。不安から逃げるための、ありとあらゆる方法をすることをとることを禁じます。この手続きにより、暴露であげた不安をしっかりと維持することになります。

暴露で不安をあげ、反応妨害で不安を維持する。これで準備は完了です。あとはその状態を維持すれば、自然に不安が下がっていきます。一度しっかりとこの手続きをとると、症状の強度や頻度がかなり少なくなります。これを繰り返していくことで進められていくのが、暴露反応妨害法です。

暴露反応妨害法は、強迫性障害や不安障害、パニック症などに対して、非常に効果がある治療法です。強迫性障害の場合、積極的にこの暴露反応妨害法を行った場合、4人中3人がほぼ治癒するといわれています。

にもかかわらず、こうした疾患に苦しむ人が多いのは、やはり暴露と反応妨害という手続きが本人にとって耐え難い苦痛を生じさせるからでしょう。暴露反応妨害法は、決して誰かから強制されて行うものではありません。自分の意志で行うものです。最初の一歩を踏み出すのはとても勇気がいりますが、かならず不安は減少します。信頼できる支援者と、ぜひ取り組んでみましょう。

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